近視進行抑制治療 マイオピン

近視進行抑制治療

当クリニックでは、学童期のお子さまの近視を対象に、マイオピンという点眼薬を1日1回、点眼することで、近視の進行を抑制するという治療を開始いたしました。

お子さまの近視について

近視となる原因はまだよくわかっていませんが、遺伝的な要因、たとえばご両親のいずれか、または両方が近視の場合、発症のリスクが高まるとされています。また、読書、テレビ、スマートフォン、ゲームなどの長時間使用といった環境的要因も、近視を進行させると考えられています。

近視の多くは小児期に発見されます。お子さまの近視は、主に眼軸長が伸びる(眼球が楕円形になる)ことで、ピント位置がずれ、発症します。特に近くのものを見続けることで近視は進行しやすく、眼軸は一度伸びてしまうと元には戻りません。お子さまに以下のような行動が見られたら、近視である可能性があります。

学童期に近視を発症し、それに気づかないでいると、学業に遅れをきたす場合もあります。また、近視が進行すると、将来的に網膜剥離や白内障、緑内障、黄斑変性などの合併症を引き起こす可能性もゼロではなく、弱視等につながるリスクもあります。

マイオピンについて

現在のところ近視は未然に防ぐ方法がなく、眼鏡やコンタクトレンズによる視力矯正が主な対処法となっていますが、最新の治療として、アトロピンを0.01%配合させた点眼薬「マイオピン」による治療が開発されました。

アトロピンには眼軸長を伸ばす働きがある「ムスカリン受容体」をブロックする効能があると言われており、ムスカリン受容体拮抗薬とも呼ばれています。散瞳作用や調節麻痺作用などがありますが、0.01%という低濃度で使用することにより、それらの作用がなく、眼軸長の伸びを抑え、近視の抑制に有効であることがわかりました。

マイオピンはシンガポール国立眼科センター(SNEC:Singapore National Eye Centre)の研究に基づいて開発された薬剤です。日本でも複数の大学病院において、軽度または中等度近視と診断された学童を対象に、0.01%アトロピン点眼剤の24か月間投与(1日1回、就寝前に点眼)による近視進行抑制効果を検討した結果、学童期の近視進行抑制に有効かつ安全であるとの結果が出ています。

※マイオピンは現在、日本では未承認薬剤のため、自費診療となっています。

マイオピンによる治療について

マイオピンによる治療の対象となるのは、以下のような患者さまです。

※12歳以上の方も対応可能です。臨床的データはありませんが、12歳以上でも近視は進行すると考えられますので、進行抑制の効果が期待できます。

治療の流れと費用について

内容 費用
初回 まず視力検査等の検査を行い、近視の有無や程度、マイオピン治療の適応であるかどうかを診察します。 初回に関しては保険診療にて行います。
治療開始時 現時点での目の状態などを検査・診察し、マイオピン点眼薬について使用法などのご説明をいたします。その後、マイオピン1本を処方いたします。1本で1カ月の使い切りとなります。 マイオピン1本+検査+診察 5,000円
治療開始時より1カ月後 開始時と同様に検査・診察を行い、問題がなければマイオピン点眼薬2本(2カ月分)を処方いたします。 マイオピン2本+検査+診察 8,000円
治療開始時より3カ月後 検査・診察を行い、継続可能かどうかを判断します。問題がなければ、マイオピン点眼薬3本(3カ月分)を処方いたします。 マイオピン3本+検査+診察 11,000円

◆点眼に関しては、1日1回、就寝前に行うようにします。
◆治療期間に関しては、最低2年間、継続していただき、効果をみるのが望ましいでしょう。
◆マイオピン処方と同じ日に、保険診療(眼の病気の治療やメガネ・コンタクトレンズの処方など)を行うことはできません。

副作用および注意事項について

マイオピンによる治療は、近視の進行を抑制するものであり、基本的に視力を回復するものではありませんが、点眼後1~2カ月で視力を回復する患者さまもいらっしゃいます。
またマイオピン治療に関しては、全身に影響を及ぼすことや、アレルギー性結膜炎、白内障といった眼の病気を引き起こすことはほとんどないなど、副作用も少なくなっています。お子さまの近視が心配の際は、一度お気軽にご相談ください。